フォードと百度の車載OSでの提携はうまくいくか

2018年、フォードは百度と協力して4車種の車載システムを構築すると発表した。広州モーターショーで今年発売されたフォードEscapeは4車種目だが、今回は両社がより高度でかつよりオープンな提携関係を結んでから最初の車種だ。

同年に発表されたフォード中国2.0戦略では、フォードと百度が共同で開発したSYNC+インテリジェントコネクテッドシステムが「より中国的」戦略の代表として新車のダッシュボードに搭載され、中国市場で特別に提供された。

このシステムは、「SYNC」と「+」の2つの部分に分けられている。

SYNCは自動車制御系のWIFI、Bluetooth、バックライト映像、ラジオ、360度ビューなどのサービスを含んでおり、これはSYNC+車載システムの最も核心的な部分であり、この部分は機能上、フォードが独自に開発した車載システムSYNC 3と変わらないが、SYNC+がそれと異なったのは、フォードが、自社と百度のサービスを一つのエコロジープラットフォームに収めようとするところだ。「+」は百度の部分で、これにはモバイルインターネットプラットフォームが得意とする音声操作、オンラインナビゲーション、ビデオや音楽、モバイル決済などが含まれている。百度の音声操作により、ユーザーは選局、音楽、ナビ情報を視聴することができる。ナビサービスは百度マップが提供する。

百度がこのほど開催した合同インタビューで、同社のコネクテッドカー事業部社長の蘇丹氏は、SYNC+システムを「ギャップを乗り越えて初めてのスマートシステム」と称した。

蘇丹氏によると、SYNC+という次世代車載システムが登場する前から車載システムはあったが、ユーザーが本当に使いやすいと感じていないことが多かった。SYNC+システムでは音声対話が70%に達しており、従来のインターネットから人工知能(AI)への大きなギャップを埋めた。

フォードは独自に開発した車載システムSYNC 3を持っているにも関わらず、百度と提携する思惑はなんだろうか。フォード中国は、「中国市場で、中国市場のため」というフォードの現地化戦略があったためだと説明している。

提携前のフォードの中国市場向け車載システムは、SYNC 3からのシンプルな現地化システムであり、中国ユーザーの多様なニーズに応えることはできなかった。そこでフォードは、技術上、エコシステム上で協力してもらえる中国のパートナーを探したのが、フォードと百度の提携の出発点となった。

注目すべきは、フォードが百度と提携する際に、百度の「小度」車載OSシステムを導入することではなく、自動車統合に関するフォードのノウハウと安全面での経験を組み合わせ、百度の人工知能やエコロジー、さらにはフォードがカスタマイズしたシステムのSYNC+を加えたことだ。つまり、SYNC+はフォードと百度の強みを組み合わせたものだ。

環境感知、ルート選定、車両制御ロジック、運転支援など、スマートカーの中核となるソフトウェア技術は車載OS上で動作する必要がある。このため、自動車メーカー、ソフトウェアベンダーやインターネット大手が次々と進出し、車載OSが1兆ドル市場への入り口を巡る争奪戦となりつつある。

今回のフォードと百度のSYNC+システムでの提携は、OSのアプリケーション層にとどまらず、アプリケーションの操作性を保証するために、基盤となるアーキテクチャのコア層であるアプリケーション・フレームワークで共同開発が行われている。

前出の蘇丹氏によると、百度は提携にオープンな姿勢で、自動車メーカーが独立モジュールをカスタマイズして組み立てることができる。

自動車メーカーにとって、ユーザーに車載OSを提供する際、システムインターフェースをカスタマイズし、必要に応じてサードパーティのアプリケーションにアクセスし、ユーザー、車両データと情報を自動車メーカーのクラウドに保存したいと考えている。アンドロイド携帯電話メーカーのように、ベースはグーグルのアンドロイドを使っているが、インターフェイス、機能にはそれぞれ特色がある。

この中で注目すべきは、車両の構成や安全面でもフォードには「関所」があることだ。システム構築の初期に、フォードは米国の基本セキュリティ関連のテスト会社の基準を導入し、システムの基礎テストを行っている。百度との提携で開発したシステムは、フォード自身のDNAを保持すると同時に、中国市場とのエコロジー融合を図っている。こういう意味でSYNC+システムは、自動車メーカーとテク企業との提携関係のサンプルにもなる。


参考記事:https://www.leiphone.com/news/201911/mZwO6KV5gOClypGp.html

1700