メタノール改質燃料電池車?スタートアップ企業の愛馳汽車のチャレンジ

新エネルギー自動車の技術パラダイムについて、電気を除いて、ほかに何が可能なのか、何がより効率的なのかは、多くの自動車企業が考えている問題だ。

ハイブリッド技術に加え、最近では水素燃料電池も頻繁に取り上げられており、新エネ車スタートアップ企業の愛馳汽車(AIWAYS)もこの分野で新たな技術的可能性を試している。

「我々がやろうとしているのは、『メタノール改質水素高温燃料電炉をレンジエクステンダーとして働かせるトータルソリューション』だ」(注)。「この定義は一文字一文字が重要で、一文字も欠かせない」と、愛馳汽車の付強社長は説明している。

愛馳汽車は7日、第2回中国国際輸入博覧会で、デンマークのメタノール燃料電池の研究開発と製造会社のブルーワールドテクノロジーズ(中国語=藍界科技、以下BWT)と正式に戦略的提携枠組協定を締結し、技術、製品、サービス、先行研究、投資などの分野で提携する。提携後、愛馳汽車はメタノール改質水素発生のコア部品を保有するようになる。

また、愛馳汽車と山西省高平市政府は事業提携の実施契約式を行い、メタノール水素燃料電池技術の産業化を共同で推進する。

新エネルギー自動車は主にハイブリッド、電気と燃料電池の三つの技術パラダイムに分けられる。

このうち燃料電池、特に水素燃料電池が近年話題となっているが、水素の特性、システムコストとインフラコストに左右されており、長年にわたり発展が遅れている。愛馳汽車が採用する予定の「メタノール改質水素」は、この問題の解決につながると期待されている。

メタノール改質水素発生の原理は複雑ではなく、その化学反応方程式は以下のとおりだ。

CH3OH+H2O⇒CO2+3H3

発生した水素は水素燃料電池で反応を起し、動力電池とモータと結合する。つまりメタノール化学エネルギー→水素化学エネルギー→電池電気エネルギー→車両機械エネルギーへの変換を実現する。

「メタノールは水素の媒介物だ」と愛馳汽車動力システムの呉畏副総裁はこのように定義した。水素に比べ、メタノールは供給、貯蔵輸送、使用の面でいずれも優位に立っている。

供給段階において、中国は世界最大のメタノール生産国と消費国であり、生産能力と生産量は世界の半分以上を占めている。元機械工業省大臣、工業情報化省メタノール自動車試行工作専門家グループ長、工業情報化省メタノール自動車普及応用専門家指導委員会名誉主任委員の何光遠氏は、「石油不足、ガス不足、石炭豊富」という特徴を用いて中国のエネルギー構造を説明している。

中国の石炭資源は豊富で、石炭採掘の深さが増すにつれ、劣悪な石炭の量が増え、「それらは発電も直接燃やすこともできないが、メタノール生産の良い原料になっている」という。何光遠氏は劣悪な石炭の利用のために一つの道を指摘した。

中東の石油生産大国にとって、メタノールは正真正銘の副産物であり、「利用するどころか負担になる」と呉氏は、産油国の痛いところを突いて、水素を再製造することでメタノールを十分に利用できるとし、「中東のメタノールは中国に運ばれ、1トン当たりのコストは400元から700元程度」と述べた。

同様に、風力などの再生エネルギーを利用する場合、メタノールは水素に比べて優位に立っており、呉氏は「水素は簡単に集めて貯蔵することができないことに対して、メタノールは液体として貯蔵できる。また、メタノールのエネルギー密度は水素に比べて高い」と対比した。

貯蔵輸送の段階では、水素はエネルギー密度が低く、圧縮貯蔵輸送を行わなければならず、メタノールは発火しやすいも爆発しにくい液体であり、ガソリンよりも安全で、ガソリンの基準に基づいて貯蔵輸送することができる。

水素ステーションのインフラ建設コストが高いこととインフラ基準の欠如により、水素燃料電池自動車の中国での普及はずっと阻まれている。メタノール水素燃料電池自動車はインフラ建設の難題を回避することができる。

メタノールはガソリンと大差がないので、ガソリンスタンドを少し改造すればメタノールスタンドとして使えるようになり、改造コストも低い。前出の呉氏は「メタノールがガソリンパイプラインに直接触れることでゴムが膨張してしまうため、ガソリンスタンドのゴムパイプラインを流用する際、改造する必要はあるが、ガソリンスタンド1カ所あたりの改造コストは数万元で済む」とみる。

呉氏は、メタノールの毒性に対する業界の懸念について、「メタノールが人体に有害であることは事実だが、われわれはメタノールをエネルギー源として使用しているので、その点では安全だ」と述べた。

呉氏の計算によると、「メタノール改質水素高温燃料電炉をレンジエクステンダーの動力ユニットソリューションとする」は、ハイブリッドシステムを提供し、車両の動力電池の蓄電量が十数度に圧縮され、電炉の発電能力が25kwに達した場合、車両が120km/hで走行することをサポートできる計算になる。

システムコストでいえば、水素燃料電池システムの1キロワットあたりのコストは7,000元から10,000元で、そのうち高圧水素貯蔵タンクだけで30%程度のコストを占めているが、メタノール水素燃料電池自動車は高圧水素貯蔵タンクなどの高コスト部品を必要としない。

使用コストでは、車両が100キロ走行するごとに20度の電気が必要であり、メタノール0.5リットルあたり1度の電気が発生すると仮定すると、100キロあたり10リットルのメタノールが消費されることになる。1リットルのメタノールが2.1元、10リットルのメタノールが21元で、メタノール水素燃料電池自動車の使用コストは100キロメートル当たり21元に過ぎず、電気自動車の使用コストに近づいている。

注:(Weblio辞書から引用)自動車用としてもっとも期待されている燃料電池は、水素を燃料として動作する。しかし、水素は自動車に積載するには運搬性など解決すべき問題が多いため、燃料電池車の実用化初期においては、水素を多く含む液体燃料を積載し、そこから水素をつくりながら燃料電池を動作させる方法が考えられている。この液体燃料としてメタノールを使うものをメタノール改質型燃料電池車と呼ぶ。メタノールを高温蒸気と触れさせることで水素を生成する過程を改質と呼んでいる。改質のプロセスではメタノールを燃やしたのとまったく同じ量の二酸化炭素が発生するが、燃焼を利用するエンジンより燃料電池は効率がよく、相対的には二酸化炭素の削減に寄与する。


参考記事:https://www.iyiou.com/p/117794.html

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