「狡兎に三窟あり」に倣うNIO、シンガポールにも上場

ベンチャー系自動車新勢力のNIO(蔚来)は、5月20日にシンガポール取引所のメインボードに上場し、正式に取引を開始した。これにより、NIOは世界で初めて米国、香港、シンガポールの3カ所で上場を果たした中国企業となった。

今回のIPOでも、NIOは香港上場に採用したイントロダクション方式(紹介上場方式)を踏襲しており、新株発行および資金調達には関与していない。また、NIOがシンガポール証券取引所に上場するA類株式は、NYSEに上場する米国預託株式と完全に転換することができる。

もともとシンガポール証券取引所への上場は、NIOにとって新たな資金調達ルートの確保である。

NIOも、理想、Xpengも、ひたすら重複上場にこだわっている背後のロジックをまず理解しておかなければならない。即ち、ベンチャー系自動車新勢力は、自力で収益を生み出すことに成功しないうちは、あくまでも「資本ゲーム」に過ぎない。常に資金調達を続けてこそ、後続の研究開発、生産、新車投入、ブランドマーケティング、サービスの提供などがはじめて可能になる。

一方、理想汽車を含む多くの中国系銘柄はSEC暫定リストに掲載されたことで、他のベンチャー系自動車新勢力にとって米市場から追い出されるのは、もはや時間の問題である。

すぐに上場廃止とまではいかないものの、NYSEでの中国系銘柄の最近の暴落に加え、米中関係の波乱と摩擦が続いていることから、中国系銘柄の黄金時代が終焉したことは確実となった。

そこでNIOを例に挙げると、米国、香港、シンガポールなどの市場に重複上場することに執着しているのは、最悪の事態が突然発生するのを防ぐために、自分が立ち回る余地と逃げ道を残したいからでもある。

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