3年ぶりの訪中で、マクス氏はFSDの中国進出を果たすか

 5月30日、マスク氏は3年ぶりに中国を訪問しました。今回は、2019年以来3年ぶりの訪中となっている。

 今回マスク氏の訪中の目的の1つは、自動運転の中国進出を推進するためとの見方がある。周知のように、中国の新エネルギー車市場では、テスラは先進性、ブランド力、価格、販売台数のいずれにおいても「神」のような存在である。しかし、中国の消費者にとってテスラの自動運転機能は「中途半端」と感じられている。これは、ベンチャー系の新興勢力を含む多くの地元メーカーによってテスラの自動運転を上回る自信を持たせる要因ともなっている。

 テスラの自動運転製品には主にAP(オートパイロット)、EAP(エンハンスド・オートパイロット)、FSD(完全自動運転)の3つのカテゴリーがある。

 そのうち、APは高度な運転支援機能で、テスラの無料標準装備である。EAPはAPの上位版であり、スマートフォン呼び出し、自動駐車、高速NOAなどの機能を追加している。EAPの販売価格は現在中国地域で3.2万元である。一方、本格的なテスラの自動運転を実現するFSDは、データセキュリティーや地政学的な要因の影響を受け、中国市場への導入がまだ行われていない。

 FSDの主な機能には、ナビ支援運転(NOA)、自動車線変更、自動駐車、スマートサモン(車の呼び出し機能)、交通信号認識、都市道路の自動操舵などがある。

 これまで、テスラのFSDが中国市場へ進出するとの噂が何度も広まったが、どれも噂に終わった。しかし、今回の噂が本当かもしれない。その理由は、いくつか考えられる。

 まず、中国のデータ規制へのテスラの対応ができているためである。中国政府は近年、データの安全性を重視し始め、すべての海外企業が中国市場で収集したデータを中国国内で保存しなければならない法律を定めた。テスラは2021年5月に中国にデータセンターを設立し、データストレージの現地化を発表した。さらに、研究開発などで一時的にデータを海外へ転送する必要が生じた場合、事前に国家監督管理部門が審査して安全性を確認する必要があるが、それもテスラのデータセンターが立地している上海臨港地域で試験が行われ、審査プロセスが定着しつつあると考えられている。

 次に、テスラの累計中国販売台数が112万台に達し、保有規模が拡大しているため、FSDの大量販売が可能になっている。特にAPとEAPの2つの製品により、テスラは中国国内で十分なデータを蓄積している。FSDが中国に進出できれば、米国や他の地域のデータに頼らずに、中国国内でも自動運転関連のソフトウェアのイテレーション(改良・更新を繰り返すこと)が可能だとテスラは判断している。

 

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