2020年の電気自動車の市場は引き続きオンライン配車に託せるか

電気自動車にとって本当の市場はどれなのか?

2019年は、間違いなくオンライン配車だった。2020年、補助金が次第にフェイドアウトし、個人購入はまだ大規模に始まっていない。電気自動車の販売は、オンライン配車に引き続き託せるだろうか。

電気自動車ウォッチャーの邱kai俊氏は複数のオンライン配車事業者を取材し、自動車金融関係者にも意見を求めた。

オンライン配車市場の高度成長は期待できず

オンライン配車業の発展が進んでいる深セン市は2019年第4四半期の運営公告で、「オンライン配車業の1日当たりの営業受注数、運営距離数、収入がいずれも減少している」と警告した。具体的には、同期、深セン市のオンライン配車ドライバー1日当たりの受注数は前月比6.7%減の約6.72件、1日当たりの販売額は同比3.2%減の約236.7元だった。

1台当たりの受注数はなぜ減ったのか。原因の一つは車両の数が多すぎることだった。深セン市が2019年に発行した「オンラインタクシー輸送証」の車両数は6万2300台。深セン市1日平均40-50万件の注文数からすると、(1日当り10件の受注を維持するには)4-5万台の車両で十分だ。

商売がうまくいかず、多くのオンライン配車ドライバーが脱退した。 昨年第4四半期、同市オンライン配車ドライバーの解約は前年比213.9%増の1877台で、累計4617台脱退した。

深センのケースは決して例外ではない。コンサルティング会社Analysys易観の予測によると、2019年のオンライン配車の取引規模は2116億7600万元で、2018年の2224億9600万元から5%近く減少した。

すでに輸送力の供給過剰の兆しが見え始めている中、オンライン配車の新規増加も例年以上の規模になることはないと容易に推察できるだろう。

長江デルタ地域にある配車サービス業者の社長の胡氏は、オンライン配車は、数年前までは毎年前年比数倍の規模で増えつづけてきたのに対して、2020年は、せいぜい20パーセント程度しか増えないだろうと予想している。

自動車金融サービス会社建元資本の王会長は、現在のオンライン配車企業による車両調達はもはや継続できないとの見方を示している。現在のオンライン配車には、資格審査を通したドライバーと通していないトライバーが混在し、兼任ドライバーの出入りが激しくて、今後オンライン配車の市場規模が伸びるかどうかは判断しにくい。一方、「自働車メーカーは自前の配車サービスを開始しており、新規参入者が増えるのは間違いない。しかし、これらのメーカーで、配車事業で自社の販売台数を稼ぐ動機が働いているため、実際にオンライン配車として運営に回すかは不透明だ」と話している。

オンライン配車市場の電動化はどれくらいになるか

限定的とはいえ、オンライン配車市場にはまだ伸びしろがあるということだ。しかし電気自動車はオンライン配車市場の中でどれだけシェアを分け合えるのだろうか。

2018年から、国の主管部門はネット配車のコンプライアンス化を推進し、運営業者に対して「オンラインタクシー経営許可証」、ドライバーに対して「オンラインタクシー運転者証」、車両に対して「オンラインタクシー輸送証」の3つの証明書が揃っていることを要求している。これは各都市がオンライン配車業界を管理する手がかりとなり、各地域はオンライン配車の管理政策を打ち出している。

「各都市は、オンライン配車を都市の環境目標と結びつけることを求めており、そうすれば新エネルギー自動車のウェイトが確実に上昇するだろう」と前出の王氏は述べた。「1万台近くの運営車両が高頻度で走行していることで、インフラ投資にも牽引されている。インフラが整備されれば、オンライン配車の運営環境がよくなる。このような好循環は、すでに多くの都市で確認されている」と話した。

福建省でオンライン配車事業を営んでいる林氏も、政策が電気自動車に傾斜していることが明らかだと指摘している。

2019年8月から、オンライン配車業界に重大な影響を与える政策調整が行われた。DiDiは中国全土で「リースでの購入」(ファイナンスリース)をやめて、深セン、昆明などの地方政府も同様に「リースでの購入」を禁止する文書を出している。

「リースでの購入」とは、オンライン配車事業者が一般的に「ファイナンスリース」と呼んでいる。この方式では、ドライバーは実際に車両資産のリスクと運営のリスクを負っている。「リースでの購入」が禁止された後、主管部門は、オンライン配車事業者に、オペレーティングリースを要求している。この方式では車両資産の保有者がオンライン配車事業者となる。

「ファイナンスリースからオペレーティングリースに転換した後、影響は大きい」と、前出の胡さんは今年に電気自動車を増すつもりはないと言う。「これからはリスクを自分で背負うことになるので、絶対に電気自動車は選ばないし、相対的に価値のある車種を選ぶしかない」。トヨタのLevin、Corolla、CamryやホンダのAccorodなどのプラグイン・ハイブリッド車を好んでいる。胡氏の会社は現在、1000台以上の車両を保有しており、このうち電気自動車は300台以上ある。

一方、福建省の林氏はオペレーティングリースでも電気自動車を選ぶという。政策要因はもとより、電気自動車は燃費でアドバンテージがあるとの見方を示している。福建省の中小都市にしても福建省全体にしても充電コストは比較的に安いためだ。林氏は、総合的にみて、ガソリン車やプラグイン・ハイブリッド車よりも、電気自動車の方が燃費は安いと述べた。

江西省にあるオンライン配車事業者の陳氏も、政策転換以降、業者が新規に車両を増やす意欲はかなり低下しているとみて、とくに昨年下半期から、DiDiも「リースでの購入」をやめて、多くの中小業者は今後生き残ることができないだろう」と述べた。

陳氏によると、多くの事業者は、たとえ資金調達ができても電気自動車には手を出せない。「彼らにとって残価率を含めて、電気自動車を増やすのはリスクが高すぎる」と。陳氏は、自分の今年の購入目標は2019年とほぼ同じだが、ライニングコスト重視で新エネルギー車の比重はすこし高くしたいと紹介した。江西省全体では、ネット配車の新規購入の6、7割程度は、電気自動車になると見ている。

まとめ

オンライン配車の電動化傾向が明らかになっているが、一部の地域ではオンライン配車市場が飽和状態に近づいていることに加え、ファイナンスリースからオペレーティングリースへの政策転換のマイナス影響、充電インフラ不足の制約などから、2020年のオンライン配車向けの電気自動車市場については楽観的な見方を示せない。

政策的には不利になっているが、運営側にとって電気自動車そのもののメリットがあれば、事業者は電気自動車を好んで選ぶ可能性がある。

他方、資産負担が増える中で、事業者は車両の投入産出のバランスをとるのが難しくなりつつある。悪い残価率の問題が当面解決できないため、電気自動車のランニングコストが低い特性をどれだけ生かせるかがポイントになる。


参考記事:https://www.d1ev.com/kol/108776

1315