大手ディベロッパーの参入でごった返いする新エネ車産業

 不動産大手の富力集団はこのほど、華泰汽車と戦略的提携を発表し、新エネ車、コネクテッドカー、無人運転などの分野で提携を行う。恒大宝能華夏碧桂園などの大手ディベロッパーに続き、新エネ車分野に参入する不動産業者だ。不完全な統計によると、これまでに新エネ車産業に参入した不動産業者は10社を超えている。

 国内で率先して新エネ車開発・生産を始めた企業は、インターネットの遺伝子を持っているスタートアップ企業がほとんどだった、例えば、テンセント系の蔚来(NIO)やアリババ系の小鵬汽車「車や家」理想智造など、これらの企業の創業者は、すでにインターネット業界で一定の成果を上げている人たちだ。頭の上に成功者のオーラが発し、「ベンチャーの寵児」というバックグランドを背に新エネ車産業に参入し、国内の「車作りの新勢力」の代表に浮上した。

 新エネ車産業の急速な発展に伴い、政策は新エネ車産業に傾き、パイはますます大きくなり、奪い合おうとする人も増えてきた。うち不動産業者は侮れない勢力となった。

 2015年から、不動産業者が相次いで新エネ車分野に進出し始め、まず緑地集団が15億5000万元を投じて自動車ディーラーの潤東集団の30%の株式を取得した。その后、华夏幸福グループは長城華冠に出資し、合衆汽車を買収した。その後、碧桂園による新エネ車スマートシティの建設、宝能による観致(Qoros)汽車の買収があり、恒大グループは、新エネ車企業を設立して、賈躍亭氏の「ファラデー未来」と提携して、まもなく決裂した。そして今回、富力集団は華泰汽車と手を繋いだ。 不完全な公開資料によると、資金に余裕のあるディベロッパーのうち、10社以上がここ4年間で自動車業界に参入し、投資総額は約4000億元に達している。

 なぜ、これらの不動産業者は新エネ産業に次々と足を踏み入れ、「車作り」をしようとするのか。

 背後にある原因は実は推測に難くない。 不動産業者にとっては、彼ら自身の業界はすでに天井が見えてきており、「風が吹くところ」(注)にある新エネ車産業が自分の勢力を広げるために試すべき領域だ。また、新エネ車分野では資金的な余裕さえあれば、技術基盤がぜい弱でも、後発でキャッチアップが可能だという見極めができている。インターネット大手が同様に技術的優位性を持たず、量産車を発売している実例は、技術が後発的に補完できることを証明しているに違いない。

 新エネ車産業に殺到している不動産業者は、誰もが車を作れるかのような錯覚に陥っているが、それは事実ではなく、車作りにはハードルが決して低いわけではない。

 まず生産資質については、政府の許認可は厳しくしているものの、現時点では大きな壁にはなっていない。

 次に資金力と技術力が必要だが、大手ディベロッパーにとってはあっさりクリアできる。実際、前出の不動産業者は新エネ車分野に進出する際に、資本参加、元の新エネ車企業の買収、技術の購入、合弁会社の設立など、資源相補的な方法で参入する場合が多い。すなわち、お金があるものはお金を出し、資源があるものは資源を出し、技術があるものは技術を出すということだ。 華夏幸福、宝能、恒大などの不動産業者は、車を作ることに慣れていない分野では、資本参加、関連会社の買収などが主な方法で、生産ライン、技術特許、制品、チームなどの重要な資源を穫得し、資金を増やすことで、資金不足の企業に資金を提供して迅速に製品を出すことができ、市場で優位に立つことができる。

 当面大手不動産の前に立ちはだかる大きな壁の一つは、おそらく既存の自動車産業のサプライチェーンにどのように自分の新エネ車事業を組み込むかということだろう。とくに一部のリソースはお金さえ出せば買えるようものではなく、新規参入者にとって死活問題にもなる。

 ますます多くの企業が新エネ車産業に参入するにつれ、サプライチェーンのリソース不足は自動車の量産時期と生産能力を決定する重要な要素となり、同時に自動車そのものの品質にもつながっている。例えば、電気自動車にとって重要な高性能動力電池は、供給不足が常態化しており、ベンツやテスラなどの大手完成車工場でさえも頭を悩ませているのに、参入したばかりの自動車メーカーにとっては大きな試練となっている。

 動力電池の供給は、車作りの基本の一部に過ぎず、車作りをしようとしている企業にとって本当に必要な条件はほかにたくさんあり、決してすぐにリスクが顕在化されておらず、卓上の分析では明らかにできるものではない。

 最後の壁は競争力だ。 現在、世界的なパイオニアであるテスラをはじめ、国内のスタートアップ自動車メーカーの蔚来、小鵬、威馬、新エネ車分野に進出している伝統的な自動車メーカーのBYD、吉利、北汽などの新エネ車製品はすでに大規模な量産を開始しており、市場でもブランド効果を形成している。

 現時点で新エネ車分野でビジネスを展開することを選んだこれらの大手不動産業者が買収や投資を通じて生み出した新エネ車ブランドの認知度は、先行メーカーとは比較にならず、まだ量産を実現していない。どんなクルマを売り出すのか?彼らにはまだチャンスがあるのだろうか? 彼らはまたキャッチアップができるだろうか。すべては時間が検証してくれることを待たなければならない。

注:スタートアップ企業XIAOMI創業者の雷軍氏の名言として「風の吹くところに立てば、豚だって飛べる」という言葉はベンチャー業界で有名であり、事業コンセプトを考えるにあたって重要なのは、時流を丁寧に見極め、きちんと波に乗るという意味だ。


参考記事:https://www.d1ev.com/news/pinglun/96258

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