美団 vs DiDi、「アグリゲート型エコロジー」で対抗(1)

(やや難解な記事ですが、モビリティビジネスモデルの方向性を示唆する内容なのでご紹介します)

過去数年間、中国国内のモビリティ市場で最大の目玉となったのが「美滴戦争」(美団(Meituan)と滴滴(DiDi)の戦い)だ。 両者はお互いに自社製品ラインを相手のコアビジネスに食い込ませている。

このうち、美団が、DiDiのテリトリーである配車サービスに進出したのは、消費者に「飲食・娯楽・移動」を一体化した体験のプラットフォームを作り、エコシステムのクルーズドループを実現したいからだ。一方DiDiは美団のテリトリーであるフードデリバリー事業にも進出していることについて、市場では憶測が飛び交っているが、DiDi自身は本当の狙いを明らかにしていない。

モビリティ市場全体を見渡すと、プレイヤーは2種類に分けらる。1つはDiDiをはじめ、自動車メーカー、地図メーカーなど、ネット配車業務に特化したプラットフォームだ。2つ目は、美団を筆頭に、携程同程などを含めた自身のコア業務システムに注力し、ネット配車プラットフォームを自身の産業チェーンの補充とし、エコロジーのクローズドループを形成しようとするプラットフォームだ。

1つは移動、1つは飲食・娯楽、市場では両者は別々の業務体系に属していた。しかし、ユーザーのニーズの変化に伴い、飲食・娯楽・移動のニーズをすべてカバーするスーパープラットフォームを構築することが、上記2種類のプレイヤーの共通の訴求となっている。

すると、「アグリゲート」(集積)が競争のキーワードになる。

美団

ユーザーにとって、1つのプラットフォームで、1つの要件しか満たせないのであれば、ユーザーは、需要が生じたときのみ、利用するが、それ以外の時にはそのプラットフォームを必要としない。例えば、あるサイトの主な業務がチケット予約サービスであるとすると、利用者が電車のチケット、飛行機のチケットを注文する必要が生じた場合、そのプラットフォームで注文しようとするかもしれない。しかし、観光やホテルなどニーズが変われば、彼らはそのプラットフォームを思い浮かばないだろう。このような単一機能のビジネスモデルは、ユーザーのプラットフォームへの粘性を強めることができず、相対的に複数の要件を同時に満たせるプラットフォームが登場すれば、ユーザーは単一機能のプラットフォームを引き続き利用しなくなあるだろう。

そのため、美団というプラットフォーム上で形成された「飲み食い遊び」のコア業務システムは、ユーザーの様々なニーズに応えることができる。そして、これらのニーズは単一のニーズではなく、連結していくことで、ユーザーがいつまでもこのプラットフォームで消費できるようにしている。現在、米団のユーザー数はすでに4億人前後に達している。

美団ユーザーにとって、飲み食い遊び以外のもう一つの大きなニーズは、1キロ以内と3キロ以上の移動を含むモビリティニーズだ。これは、米団がモビリティ分野に進出する最も重要な理由の一つになる。

2017年2月、美団の配車事業である「美団配車」は(江蘇省)南京市で試験運行を開始し、1年後には1日当たりの注文数が10万件を突破し、チームは200人に拡大した。その後上海に進出し、大規模なインセンティブ合戦により1日当たりの注文数が15万件に達した。

データによると、一時米団のリピーターユーザーが上海市のネット配車に占める割合を20%以上占めており、DiDiのシェアを一部奪った。

米団側も、美団配車がフォーカスしたてきたのは、「飲食・娯楽・移動」の各シーンをつなげて、モビリティと生活シーンとの接続をさらに緊密にすることだ。例えば、ユーザーが配車でレストランに行って食事をする場合、米団のAPP内のどのレストランのページでも、配車ボタンをクリックするだけで複数の車種を呼び出すことができる。また、ホテルや旅行、レジャーなどの他業種の業者もこの機能を自社ページに導入している。

モビリティへの本格的な進出は、米団によるシェア自転車モバイク(Mobike)の買収から推察できる。買収当初、米団の王興CEOは、モバイクが独立ブランドとして運営されることや、既存チームが再編しないことなどを明らかにしていた。しかし、しばらくして、美団はモバイクを「美団配車」に名称変更し、米団のAPPに統合すると発表した。現段階では、モバイクの新型自転車はもはや米団APPでしか利用できない。

想像してみよう。美団のユーザーは美団の配車車両、またはシェア自転車に乗って目的地に移動し、その過程でいつでも美団のオフラインのレストラン資源とオンライン注文、予約、ホテル予約サービスを呼び出すことができ、かつ全体がシームレスに連結されていれば、需要は完璧に満たされるだろう。

以上のことから、シェア自転車からネット配車まで、美団のモビリティにおける布石の最大の目的は、これらのサービスを飲み食い遊びとつなぐ役割を果たすことにあると考えられる。

クローズドループの角度から見ると、多くの場合、移動は不可欠であり、美団はモビリティ業務を提供している場合、ユーザーはプラットフォーム上で自分の飲み食い遊びのワンストップ式のニーズを解決でき、他のプラットフォームを追加で使用する必要はない。このように、ユーザーの粘性が増すだけでなく、プラットフォームでエコロジーチェーンのクローズドループも強固なものとなる。

つづき


参考記事:https://www.d1ev.com/news/qiye/101894

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