BYDがDENZAを完全子会社化!メルセデス・ベンツの撤退とその理由

 ベンツとBYDの合弁で設立された新エネルギー車ブランド「DENZA(騰勢汽車)」は、最近大きな株式変更を行いました。9月14日、メルセデス・ベンツは保有していたDENZAの10%の株式を正式にBYDへ譲渡し、これによりDENZAはBYDグループ傘下の完全子会社となりました。

 DENZAブランドは2010年の設立以来、BYDとダイムラー(ベンツの親会社)がそれぞれ50%の株式を保有していました。当初、両社はこのブランドに大きな期待を寄せており、特にダイムラーはこの合弁事業を通じて中国の新エネルギー車市場に進出したいと考えていました。しかし、DENZAの初期の市場パフォーマンスは芳しくありませんでした。2014年から2018年にかけて発売された車種の販売台数は振るわず、2018年の販売台数は1974台にとどまり、前年から58%減少しました。この状況を受け、両社は何度も資本注入を行い、総額40億元以上を投入して事業を維持してきました。

 この厳しい状況を打破するため、2019年以降はベンツがDENZAの販売やマーケティングを担当しましたが、それでも販売台数の大幅な向上は見られませんでした。こうした中で、ベンツは徐々にDENZAに対する主導権を減らし、2021年には持株比率を10%に引き下げ、BYDが90%まで持ち株を増やしました。

 その後、DENZAはBYDの主導の下、技術や製品、販売チャネルの調整などの改革を進めました。2023年には販売台数が12.78万台に達しましたが、その9割がD9という1モデルによるもので、市場で確固たる地位を築くには至っていません。これがベンツがDENZAから撤退する一因となりましたが、もう一つの理由は、ベンツが自社のコア事業にリソースを集中させ、DENZAの発展に深く関与し続けることをやめたためです。現在、ベンツの新エネルギー車事業の重点はEQブランドにあり、EQA、EQB、EQCの3つのEVモデルの市場パフォーマンスが十分でないこともあり、リソースの再配分が求められています。

 それでもなお、ベンツとBYDは今後もバッテリー供給などの分野で長期的なパートナーシップを維持していく予定です。つまり、今回のベンツの撤退は、ベンツとBYDのバッテリー協力関係には影響を与えないとされています。将来的には、メルセデス・ベンツのEVサブブランド「EQ」の製品にBYDのバッテリーが搭載されることが期待されています。

 DENZAの経営に10年間関与したことで、ダイムラーは新エネルギー車が急速に発展する中国市場で貴重な経験を積み、顧客のニーズをより深く理解しました。一方、BYDも、この10年間でダイムラーから高級車ブランドの技術だけでなく、ブランド構築、ユーザー運営、販売ネットワークに関する経験を学びました。

 今回の株式変更について、両社から公式コメントはありませんが、市場データを見る限り、BYDが引き継いだ後のDENZAのパフォーマンスはやや向上しています。しかし、競争の激化に伴い、DENZAの今後の発展には依然として多くの課題が残されており、特に自主ブランドと合弁ブランドが競い合うハイエンド新エネルギー車市場において、DENZAは製品と市場戦略のさらなる強化が求められています。

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