中国商務省、自動車メーカーに指示:EVコア技術は国内に、海外生産拡大は慎重に

 海外の自動車市場において、中国自動車メーカーの影響力は拡大し続けています。しかし、ロイター通信とブルームバーグが最近入手した情報によれば、中国商務省は国内自動車メーカーに対し、世界市場での拡大に慎重を期すよう新たな警告を発し、特にロシアやインド、トルコなどへの投資において、地政学的リスクを十分に考慮し、コア技術を保護しながら不必要な経済的・政治的リスクを回避するよう求めています。

 中国商務省は今年7月、特別会議を開き、国内自動車メーカーに対し、特にロシア、インド、トルコなどでの投資についても慎重に行動するよう注意を促しました。これらの国々では規制環境が複雑で、貿易障壁のリスクが高まりつつあり、現地での生産能力拡大には大きなリスクが伴うとされています。

 中国の自動車メーカーは、特に2022年以降、ロシア市場で顕著な成功を収めています。アメリカとその同盟国による対ロシア制裁の結果、西側の自動車ブランドが次々とロシア市場から撤退し、その空白を中国の自動車メーカーが急速に埋め、現在ではロシア新車販売台数の約3分の2を占めています。しかし、中国商務省は、ロシアの地政学的状況の不安定さを考慮し、ロシアでの生産能力拡大を慎重に行動するよう強く警告しています。

 また、インドについても、中国商務省は国内自動車メーカーに対し、自動車関連の投資を行わないよう厳しく警告しています。インド政府は中国企業に対し投資を呼びかけていますが、商務省はインドが中国自動車に対する貿易障壁を検討しているとし、メーカーが外部市場の魅力に盲目的に追随すべきではないと強く警告しています。

 トルコにおける投資についても、商務省は中国工業情報化省や駐トルコ中国大使館との緊密な協力のもとで進める必要があるとし、投資プロジェクトが中国の国益に合致していることを確認するよう指示しています。

 一方、商務省はヨーロッパやタイに対する投資については比較的穏やかな姿勢を示しており、これらの地域では自動車の最終組立を行うことが推奨されています。

 さらに、中国政府は特に電気自動車技術の保護に力を入れています。商務省は、自動車メーカーが電気自動車のコア技術を国内に留めることを求め、重要な部品は国内で生産し、ターゲット市場で最終組立を行う「CKD方式」を採用すべきだと提案しています。この方法は、中国の技術的優位性を保護するとともに、外部市場で技術がコピーされたり失われたりするリスクを低減する効果が期待されています。

 EUが中国の電気自動車に対し追加関税を課す方針を発表したことを受け、一部の中国自動車メーカーは貿易障壁を回避するため、海外での工場設立を検討しています。しかし、商務省のこうした方針は、自動車メーカーのグローバル展開に影響を与える可能性があります。例えば、BYDはトルコで年間生産能力15万台、雇用規模5000人の工場建設を計画していますが、こうした計画にも見直しの必要性が生じるかもしれません。

 一部のアナリストによれば、いくつかの国々は中国の自動車メーカーを誘致し、経済成長や雇用創出を図りたいと考えていますが、中国が技術保護を重視し、地政学的リスクが増大していることから、これらの投資計画には多くの課題が伴う可能性が高いと指摘しています。

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