飛凡汽車自動運転部門、大規模な人員削減、SAICの自動運転戦略が苦境に

 SAIC(上汽)傘下の「R」ブランドとして知られている「飛凡汽車」の自動運転研究開発部門は、約200人に及ぶ大規模な人員削減と統合に直面しているとの報道がありました。このニュースは業界から注目されると同時に、SAICの自動運転戦略が苦境に立たされているのではないかとの憶測を呼んでいます。

 SAICの自動運転研究開発体制は主に、SAIC研究開発総院スマート運転センター、SAIC飛凡自動運転部門、SAIC AI Labの3つに分かれています。このうち、研究開発総院スマート運転センターは、自律駐車やACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などの基本的な運転支援機能の開発を担当しています。飛凡自動運転部門は、高度な運転支援システムやコネクテッドシステムなどの高度な自動運転機能の開発に携わっています。同社のAI Labは、L4クラスの自動運転技術の開発と実用化に力を注いでいます。

 今回の人員削減において、SAICは従業員に対して3つの選択肢を提供しています。社内転勤、退職、または「N+1」補償を受けることです。

 社内転勤については、上位レベルの開発チームはSAIC傘下のソフトウェア会社「零束」(Z-ONE)に、下位レベルの開発チームは上研究開発総院のスマート運転センターに編入されることとなります。

 社内転勤や退職を選択しない場合、従業員は1月末にN+1契約を締結し、年末賞与が付与され、2月末にN+1+年末賞与が追加され、2月からは在宅待機が開始され、基本給のみが支給されることとなります。

 複数の情報によれば、SAICはこれらの3つの部門の調整と統合を進めています。飛凡自動運転研究開発チームの大規模なリストラのニュースは、少なくとも2つの情報を示唆しています。1つは、Rブランドの自動運転の成績が満足なレベルに達していないことであり、もう1つはRブランドの販売に勢いがなく、最近になって経営トップが交代したことが調整の始まりであることです。

 SAICのRブランドは、当初はハイエンドEVとして位置づけられていましたが、設立以来の業績は満足のいくものではありませんでした。2022年の飛凡汽車の年間販売台数は1.5万台に満たないものであり、2023年に「飛凡F7」と「飛凡R7」の2車種が力を合わせたものの、年間販売台数は2万台を超えたものの、NIOや理想汽車、Xpengなどの主要新興勢力には大きく及びませんでした。同じくSAIC傘下のIM Motor(智己汽車)にも劣っていました。

 このような低迷した販売台数の背後には、飛凡汽車の自動運転技術が引っ張り足をしていると考えられます。特に認知度の低い新規ブランドは、知能化をセールスポイントとするしかありませんが、それが市場で際立っていない場合、注目を浴びず販売が伸びないのは当然のことです。

 飛凡汽車の自動運転システムは、SAICが3年かけて10億の研究開発資源を投入し、業界初の航空機の理念を取り入れた技術を備えています。しかし、Rブランドに対するエンパワーメントが不十分であり、時間と費用がかかりすぎて、最終的には期待に応えられない結果となりました。

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