中国の動力電池産業、2023年の生産拡大と2024年以降の過剰能力への警鐘

新エネルギー車の生産・販売台数

 2023年には中国の新エネルギー車産業が政策と市場の共同推進により顕著な成果を収めました。CAAM(中国自動車工業協会)のデータによると、2023年通年の新エネルギー車の生産・販売台数は、それぞれ前年同期比35.8%増の958.7万台、37.9%増の949.5万台に達し、市場シェアは31.6%に達しました。そのうち、新エネルギー乗用車の生産・販売が占める割合はさらに高く、それぞれ34.9%と34.7%に達しました。

動力電池搭載量と生産能力拡張

 自動車市場の急速な成長に伴い、動力電池搭載量も増加し続けています。中国自動車動力電池産業革新連盟のデータによると、2023年通年の動力電池搭載量は前年比31.6%増の387.7GWhに達しました。

 動力電池の生産能力拡大が継続しており、中国の動力電池メーカーは国内外で計56件の新プロジェクトを投資・建設し、投資総額は5455.18億元を超え、動力電池の生産能力は1361GWhを超える計画です。

国内

 国内では、44件の動力電池新設プロジェクトがあり、総生産能力は936.3GWh超を計画しています。BYD、EVE Energy(億緯鋰能)、Ganfeng Lithium (赣锋锂业)など、中国国内の企業が電池生産能力の拡大を加速し、プロジェクトは四川省から湖北省、遼寧省などの複数の地域をカバーしています。

海外

 海外市場でも注目されており、中国企業の海外での新規プロジェクトは12件あり、生産能力は400GWh以上を計画しています。主な計画稼働時期は2024年から2026年に集中しています。

 CATLは2023年2月、フォードと米ミシガン州に合弁で動力電池工場を新設し、リン酸鉄リチウム電池を生産し、2026年の稼働を目指すと発表しました。CATLは2023年10月、投資家の質問に答えた際、ハンガリー電池工場の計画生産能力は100GWhで、1期はすでに着工しており、2年前後で建設が完了する見通しだと明らかにしました。

 Gotion High-tech(国軒高科)も同様にモロッコ、スロバキア及びドイツなどで動力電池の新産業の配置を行いました。このうち、国軒高科はモロッコに年産能力100GWhの電池工場を建設する計画です。

 EVE Energy(億緯鋰能)は海外市場でも4つのプロジェクトを進展させています。このうち、マレーシアの円筒のリチウム電池の制造プロジェクトは5月に着工し、6月には最大99.71億元を投資し、ハンガリーのデブレセンで乗用車用円筒型電池事業を建設すると発表しました。このほか、タイの6GWh電池生産拠点、米国の電池工場がそれぞれ7月と9月に契約を結びました。

 また、Sunwoda(欣旺達)とAESC(遠景動力)も海外市場での工場展開拡大を続けています。2023年8月9日、Sunwodaは傘下の子会社を通じてハンガリーに約19億元を投資し、リチウムイオン電池、動力電池システムの製造と販売などの業務を行う新エネルギー車動力電池工場第1期を建設すると発表しました。

動力電池需要見通し

 世界の動力電池需要について、中国の研究機関は2024年には1000GWhを超えると予測しており、またブルームバーグは、2025年までに世界の動力電池の需要は1200GWhに達すると予測しています。

過剰生産能力と過当競争

 2023年にはすでに過剰生産能力が発生しており、2024年にはさらに深刻化する可能性があり、特にハイエンドの電池の生産能力が不足しているローエンドの電池の生産能力が過剰になる可能性があります。動力電池業界の競争が激化し、価格競争が全産業チェーンに広がり、一部の企業は合併・再編される運命を迎える可能性があります。

 2024年も生産拡大競争が続き、業界再編が進みます。1月のさまざまな兆候を見ると、動力電池の生産拡大の波は減退していません。企業は新エネルギー車市場の持続的な成長に対応するため、次々と新プロジェクトに投資しています。

 しかし、過剰生産能力の問題が顕在化しており、業界は再編期に入る可能性があります。一部の弱小企業はエネルギー貯蔵分野に移行するか、合併・再編される可能性があります。自動車メーカーはM&Aなどを通じて動力電池分野での支配力を強化し始めています。

終わりに

 総じて言えば、2023年は中国の新エネルギー自動車産業が盛んに発展した年であり、動力電池産業も大きな進展を遂げました。しかし、市場競争の激化や過剰生産能力の問題が浮上する中、2024年以降は、国内動力電池業界が不動産業界のようなバブル崩壊に直面する可能性が議論され始めています。

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