リン酸鉄リチウム電池は動力電池市場で「復権」をはかる

 最新の2019年第8回「新エネルギー自動車普及応用車種推薦目録」では、170車種の純電気自動車がリン酸鉄リチウム電池を搭載し、全229車種の純電気自動車型のうち74.23%を占める。

 2019年1-8車種の新エネルギー自動車の「推薦目録」に占めるリン酸鉄リチウム電池搭載車種の割合の傾向を示すグラフを見てわかるように、2019年以降、リン酸鉄リチウム電池が組み込まれた車種が当期「推薦目録」に占める比率は上昇傾向にある。

「推薦目録」に占めるリン酸鉄リチウム電池搭載車種の割合

 財政補助金が大幅に後退し、車の安全がますます注目される中、リン酸鉄リチウム電池は今は自ら「復権」を図っている。

 新エネ車の財政補助金は大幅に減少し、2019年の乗用車補助金の引き下げ幅は70%を超え、完成車メーカーはバッテリーコストにより敏感になっている。

 中国化学物理電源業界協会動力電池応用分科会の張雨幹事長は、「リン酸鉄リチウム電池のコストは三元系リチウム電池より10-15%低く、コスト面で大きなメリットがあるため、今年は多くのメーカーがリン酸鉄リチウムに再び目を向け始めている」と指摘している。

 補助金の厳しい交付要件をクリアしきれず、多くのリン酸鉄リチウム電池搭載車種は、三元系リチウム電池搭載車種に比べて劣勢にあるが、大規模な地方マーケットで安価なリン酸鉄リチウム電池搭載のA0級車種が、三四級都市と田舎で人気を集めている。

 前出の張氏はまた、安全性もリン酸鉄リチウム電池が動力電池市場で「復権」を図れるもう一つの重要な条件だとした。ここ数年来、電気自動車の安全事故が頻発しており、多くの業界専門家は電気自動車の安全性により寛容な態度をとるよう呼びかけているが、消費者は電気自動車の安全性に対して、常に厳しい要求を持っている。そのため、相対的に安全なリン酸鉄リチウム電池を搭載した電気自動車は、再び多くの消費者の選択肢となっている。

 2019年第8回新エネルギー自動車の「推薦目録」でも、エネルギー密度の面でリン酸鉄リチウム電池を搭載した31車種のエネルギー密度は160Wh/kgを超え、最高で161.27Wh/kgとなった。同目録に三元系リチウム電池を搭載した電気自動車のうち、18車種のエネルギー密度は160Wh/kg以上で、最高175 Wh/kgとなっている。このことから、リン酸鉄リチウム電池のエネルギー密度は、三元系リチウム電池にも近づきつつあることがうかがえる。

 リン酸鉄リチウム電池を多年にわたって開発してきたBYDは、2020年までに次世代のリン酸鉄リチウム電池を発売し、体積比エネルギー密度を50%引き上げる計画だ。前出の張雨氏は、これは同じ車種で新型のBYDリン酸鉄リチウム電池を搭載することで電池の容積が50%向上することを意味しており、重量増加の影響もあるかもしれないが、最終的にはトータルパフォーマンスが大幅に向上することは間違いないとの見方を示した。

 バッテリ寿命に関しては,りん酸鉄リチウム電池の充放電サイクル回数は約3500回から容量が減衰し始めるが、三元リチウム電池は通常2000回の充放電サイクルを行うと減衰し始め、その差は大きく、りん酸鉄リチウム電池の優位性が改めて示された。

 前出の張氏によると、2018-22年、リン酸鉄リチウム電池の出荷量の複合年次成長率(CAGR)は30%を超える見込みで、今後2-3年以内にリン酸鉄リチウム電池の市場シェアが大幅に増加する見通し。また、三元系リチウム電池と比べ、中国ではリン酸鉄リチウム電池への投資が多く、生産・販売量も多く、産業の成熟度と製品のコストパフォーマンスも高く、世界で競争力を備えており、リン酸鉄リチウム電池製品の応用が徐々に増加するにつれ、優位性も徐々に現れてくるだろう。


参考記事:http://baijiahao.baidu.com/s?id=1644901727849101280&wfr=spider&for=pc

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