メーカーをパニックに陥れる値下げ合戦、中国の自動車市場のさらなる低迷の予兆か

 今年に入ってから、13年間続いた新エネルギー車購入補助金の終了、昨年下半期から実施されたガソリン車購入税の半減政策の終了に伴い、旧正月および政策の切り替えによる需要先食い要因も加わり、中国の自動車産業全体が再び減速傾向に戻った。乗連会によると、1-2月、国内乗用車小売台数は累計267.9万台で、前年同期比19.8%減少した。

 こうした状況のなかで、各社、とくにガソリン車のウェイトが高い伝統メーカーのパフォーマンスが著しく悪くなり、一部、生産停止、在庫処分を踏み切らざるを得ないメーカーも出ている。

 3月第2週、湖北省にある国有メーカーの東風汽車は、傘下の東風神龍ブランドを始めとして大規模な値下げを実施した。その後、東風汽車傘下の他のブランドも追随し、さらにベンツ、BMW、一汽、上汽などを含めて多くの自動車メーカーが負けないように販促や優遇キャンペーンを表明した。

 一部のメディアが調べたところによると、今回の値下げ合戦に参戦したのは60-80モデルに上り、金額は100億元に迫るか100億元を超える。

 中国では、地方保護主義が根強く、景気が悪い時期にその傾向がより強く現れる。今回の湖北省政府、企業補助金による自動車販促の取り組みに誘発され、他の地域も、政府主導の地元企業救済や地元市場活性化の動きが広がっていくと、自動車メーカーがパニックになる。

 問題は、値下げ合戦の後、東風汽車を含めた多くの自動車メーカーは劣勢を挽回する術を手に入れて成長の軌道に戻るのかということであるが、答えは勿論ノーであろう。また、今回これほど大規模な新車の値下げは、いうまでもなく中古車市場に壊滅的な打撃を与えるであろう。

 この光景は、2年前に経営危機に瀕したある不動産デベロッパーが全国で住宅販売価格を大幅に値下げて、その結果、そのデベロッパーが生き返ることができたどころか、不動産市場全体の低迷を引き起こしたことを連想せざるを得ない。最近の自動車市場の値下げ合戦から、今後さらなる市場の低迷が予想される。

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