テスラFSD、まもなく中国市場に進出するか

最近、上海市経済情報化委員会スマート製造推進処副処長の陳可楽氏が、次のステップとしてテスラとの協力を深め、自動運転やロボットなどを上海で展開することを推進すると表明した。これは、中国当局が、今後テスラが誇るFSD(完全自動運転機能)の中国導入に向けて許可の準備をしているのではないかと解釈されている。

現在、テスラは中国でFSDを開通していない。テスラのFSDが中国で許可されるとの噂はこれまで何度もあった。百度スマートカー事業部マネージャーの貯留瑞氏は、「FSDは今年か来年に中国市場に参入し、2025年に大規模な展開を始めるであろう」との見方を示した。また、最近起きたテスラの大規模なリコールも、その準備の一環であるとの見方もある。

テスラのFSDは、文字通り完全自動運転機能(Full Self-Drive)を意味するが、実際は高度運転支援ADASのアップグレード版であると言われている。

現在、多くの地場メーカーも、自動車線変更、自動追い越し、高速出入り口への自動走行などの機能を実現しているが、テスラが採用している技術と異なっている。テスラは常に視覚センサーを推奨して、高精度地図に頼らないことに対して、地場メーカーの多くは、主としてレーザーレーダーと高精度地図を組み合わせることで高度な自動運転機能を実現している。同時に、これらの地場メーカーは視覚センサーおよびミリ波レーダーと連携し、レーザーレーダーだけでは対応できないシーンを補っている。しかし、高精細地図に大きく依存しているため、高精細地図を失うと、高度な自動運転機能は実現できなくなる。

高精度地図サービスについては、中国では最近データ安全上の理由で規制の動きが強まっており、一般的な自動車メーカーにとって、高精度地図サービ運営に必要な甲級測絵資格を持たず、独自で高精度地図の開発、データ採集、地図更新は事実上不可能となっている。

最近、高精度地図への過度の依存から脱却するため、Xpeng(小鵬汽車)や理想汽車などの新勢力メーカーを始め、高精度地図の甲級測絵資格を持っているファーウェイでさえも、センサー依存の自動運転技術の開発を強化している。こういう意味では、これらのメーカーにとって、テスラは「師匠」でもある。

かつてテスラは新エネ車の先駆者として、中国の自動車市場に参入した。その結果、中国市場において、政策の強化やベンチャー投資の活況、消費者の新エネ車への態度の変化など、一連の変化が引き起こされており、数多くの自動車新勢力が台頭し、新エネ車市場も活性化し、中国ひいては世界の自動車産業に大きな変革をもたらしている。

現在、自動運転は、開発が進まず、実用化の見通しが立たない状況である。それだけではなく、自動運転開発に関わっている企業は深刻な経営危機に見舞われており、資本市場でも自動運転の実現可能性に対して懐疑的な見方が増えている。いままでL3-L4レベルの自動運転に特化していた多くの企業は、難局を乗り越えるために、L2やL2+と言われる高度運転支援技術の開発に舵を切り替えなければならない。

こうした状況のもとでは、中国政府が自動運転分野においても、当初の新エネ車の成功を複製しようとしているであろう。自動運転の実用化をさらに加速させたいのであれば、テスラFSDという起爆剤を市場に投入することが、良い方法であるかもしれない。

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