BYD、ブラジルとカリブ地域での拡大を進める

 BYDが、乗用車事業のグローバル化を急速に進めており、特に南米市場への進出が注目を集めています。この南米進出は、約9年前から始まっています。

 2014年10月、BYDのトップがブラジルを訪れ、同社の電動バスを売り込み、新たな市場を開拓しようとしましたが、当時の認知度が低く、顧客からの信頼を得ることができず、順調な展開はありませんでした。

 その後、BYDは電動物流トラックに注力しましたが、目標の達成には至りませんでした。2017年ごろ、BYDは現地のバス会社と提携し、中国から完成車のバスをサンパウロに直接輸送し、年間200台の販売実績を達成しました。数年の努力の末、ようやく顧客からの信頼を獲得し、ブラジルでの事業が軌道に乗り始めました。

 2021年、BYDはサンパウロで「BYD VIP DAY」というイベントを開催し、新エネルギー乗用車の「唐EV」を展示しました。翌年、同モデルはブラジルで販売が開始されました。

 2022年11月、BYD会長の王伝福氏は、ブラジルでの新車発売を祝う際に、同社がブラジルに工場を建設する計画を明らかにしました。

 そして今年、ブラジル政府がBYDによるブラジル北東部のフォード工場の買収を推進しているとの報道が増えてきました。ブラジルのバイア州にあるフォード工場の年間生産能力は約30万台で、2021年に生産が停止されています。

 BYDは最近、ブラジル最大のディーラーグループであるSagaと提携し、首都ブラジリアに初の店舗「BYD Saga Bras í lia」をオープンしました。現在、BYDはブラジルで10店舗以上の販売代理店を展開しており、今年末までには45都市に事業展開を広げ、2023年末までに100店舗の建設を計画しています。

 6月30日、BYDはブラジルのルラ大統領とBYD執行副総裁の李柯氏の会談を発表しました。写真にはBYDブラジル支社社長の李鉄氏も写っており、これによりBYDの現地工場建設計画が進展したのではないかと推測されています。

 さらに、6月29日にはBYDがジャマイカ最大の自動車ディーラーであるATLL社と提携し、カリブ地域での新エネルギー乗用車の提供と自動車の電動化を推進することを発表しました。

 この提携により、双方はカリブ地域の消費者に対して新エネルギー乗用車の販売とアフターサービスを提供します。業務はジャマイカ、トリニダード・トバゴ共和国、ケイマン諸島、キュラソー、バルバドス、アルバ、アンティグア、セントルシア、ガイアナ、スリナムの10カ国をカバーし、BYDとATLはジャマイカのキングストンとモンテゴベイに2つの店舗をオープンします。

 BYDの会長である王伝福氏は、2022年11月に、米州における戦略の強化を宣言し、ブラジルでの現地生産を中心にメキシコ、チリ、コロンビアなど17カ国でBYDの新エネルギー乗用車を展開する意向を述べています。これまでのBYDの動向から判断すると、この計画は着実に進行しているように思われます。

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