最近増えている自動運転配車サービスのテスト運営は、どれもただのショーに過ぎない?

 百度が長沙市で、Autonaviが広州市で自動運転配車サービスを展開したのに続き、6月27日にはオンライン配車最大手のDiDiも上海市で自動運転配車サービスを開始した。これは、長い間叫ばれてきた自動運転がついに、インターネット大手の配車サービスの実用化で、普通の人々の生活の中に入りつつあることを意味する。

 「タクシー運転手は失業に、自動車教習所は廃校に、業界は大きな変化を……」。しばらくして、マスコミはこの事の重要度を過大に宣伝し、世の中の大変革を鼓吹し始めている。

 宣伝されている自動運転配車サービスはどんなレベルのものか。実は、報道されているほど、個人による手軽な自動運転タクシー体験がまだできる状況ではない。仕方なく、先日テレビ局が行ったDiDiの自動運転配車サービスの生放送を見ることにした。結果にがっかりした。自動運転を深く理解していない人をチャットのネタとして引き付けるのはいいが、「業界転覆」や「イノベーション革命」というレベルの話となれば、現在の自動運転はそのような要求には程遠い。

 まず、DiDiの自動運転デモンストレーションの運営範囲は限られており、主に上海市嘉定区の限定されたエリア内に集中しているため、出発地点とゴール地点は少しでもこのエリアを外れれば、自動運転タクシーに乗ることができない。また、乗り降りにもバスと同じように固定の停留所が必要で、バスとなにが違うのか。

 次に、当日のライブで、空には小雨が降っていたが、平日ではなく、道路が混雑ではなかった。そして車両はすべて右折しており、歩行者や車に邪魔されることなくカーブを曲がった。これは日常の交通状况の中で、明らかに常識に合わない。上海の道路では、電動二輪、自転車、歩行者、そして突然の交通渋滞などは日常運転の中で最大のリスクだ。これはベテランドライバーにとっても頭が痛く、自動運転車にとって悪夢だ。例えば、直進+左折はどうなるか?交差点に人と車がいっぱい入いってくるとどうなるか?デモ当日の状況では全く分からなかったため、自動運転のレベルを理解するのに基本的に参考にならない。

 3つ目は,このような単純な道路状況でも、同乗の安全要員はテイクオーバー(手動モードに切り替える操作)を2回も行った。安全要員は「他の交通参加者が交通規則を守るとは限らず、自動運転車の走行を邪魔する可能性があり、その場合は手動モードに切り替える必要がある」と説明した。中国の都市部道路状况は非常復雑で、走行が邪魔されるのはむしろ当然の状態だ。邪魔されるたびに安全員が介入するなら、自動運転の意味がない。

 また、実況中継の当日、記者が乗車した後、自動運転車はすぐに発進せず、とまったままだった。その後、安全要員が手動で自動運転スイッチを切り替えてようやく発進した。途中、自動運転車が進行方向にある障害物を認識できず、二進も三進もいかない状態に陥って、遠隔操作のサポートを要請する羽目になった。その後、自動運転車が車線変更したが、30秒以上かかった。

 交差点では、自動運転車がカーブを曲がる別の車とすれ違う時に危うくぶつかるところだった。こんなに簡単なテスト環境でも制限速度は40km/hで、当時の道路状況とは全くマッチしていない。自動運転のオンライン配車に乗って、突然故障したり、急ブレーキがかかったり、危険な状況に遭遇したりして、乗客の心臓は耐えられるだろうか。また、目的地から500メートルも离れた停留所に停車するなら、お金を払って車に乗るよりも、最初から気持ちよくシェア自転車に乗ったほうが幸せだ。

 また、自動運転車のコストを見ると、1台の自動運転車にレーザーレーダーと感知設備などをセットにして、販売価格は軽く百万元を超えるだろう。このような高いコストを投入したタクシーはどのように実用化することができるか。将来、規模化すれば、コストが下がるとの反論は聞こえそうだが、ただの希望観測かもしれない。

 自動運転車の路上走行はハイテクのように見えるが、いまの自動運転配車サービスのテスト運営は、商業的価値や実用化の可能性のないただの「ショー」に過ぎない。

 百度の長沙での自動運転タクシーも、Autonaviが広州や上海でWeRideAutoXと提携しているRobotaxiプロジェクトも、初期は注目を集めていたが、利用ハードルが高く、体験者がごく少数などの難題はありながら、長期的に巨額の資金を投入しなければ、このような収益を見込めないプロジェクトを進めていくことができない。

 そのため最近、百度、Autonavi、DiDi、そして自動運転スタートアップ企業は急いで完成度の低い強引なテスト運営を始めている。これは、話題づくり、もっと言えば投資家向けのアピールにすぎない。なぜなら、魅力的な話や派手なデモンストレーションがなければ、投資家はついてこない。

 今は、自動運転技術とスマートカー強国もすでに中国の重点発展戦略に組み入れられており、5Gを中心とする「ニューインフラ整備」などの政策が推進されている。しかし、自動運転に限って言えば、このような「大躍進」的なやり方は本当に大丈夫かと疑問を持っている。

 中国人は、自動運転技術への情熱には復雑で微妙な心理が混ざっている。われわれはインターネット企業の「お話」を信じこんでいる。過去10年間に中国がモバイルインターネット、モノのインターネット、人工知能などの分野で急速な進歩を遂げているため、その主役となるインターネット企業が語った「物語」にわれわれは魅力を感じている。しかし、いったん資本のゲームから抜け出せば、これらのプロジェクトやイノベーションはすべてが空虚だということを忘れてはならない。


記事url:https://auto.gasgoo.com/news/202007/1I70191396C601.shtml 

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