車載WeChatは、車載SNSの最適解になるか

 広州モーターショーで21日、中汽中心(以下はCATARC)自動車技術情報研究所は「スマートカー車載通信ソフトウェア評価報告」を発表し、性能、機能、安全、プライバシー、運転安全性などのいくつかの次元で車載システムの評価方法を打ち出した。これは車載通信分野で初めての権威性のある評価報告となる。

 CATARC自動車技術情報研究所は、10人のボランティアを使ってWeChat車載版とスマホ版を対象に複数の運転シーンでテストを行った結果、WeChat車載版を使った通話では、前方道路への注視の度合い(94.74%)がスマホ版のそれ(72.70%)より高いことが分かった。また、WeChat車載版のメッセージやり取りでは、前方道路への注視の度合い(91.89%)は、スマホ版のそれ(65.20%)を上回っている。

 現在、ますます多くの自動車メーカーは、ユーザーの若年化傾向、即ち80、90年代生れ、さらには00年代生れのユーザーの割合が増加していることに気付いている。

 これらのユーザーは情報社会に生まれて、インターネットでの情報収集とコミュニケーションに対するニーズが高い。伝統的なヒューマンマシンインタフェース(HMI)は、人と車を最大限に束ね、人の注意を車のコントロールに集中させ、一過性の「コミュニケーション環境の喪失」をもたらす。これは明らかに若年ユーザーの車の機能に対するニーズを満たすことができない。そのため、いかに車の中で安全なHMIを実現するかが、若年ユーザーを増やすためのポイントとなっている。

 「コミュニケーション環境の喪失」を解消しようと様々なメーカーが試みている。アリババと上汽(SAIC)が合弁で設立したBanmaが車載SNSの「CarChat」(車信)を発表し、今年10月末にはEVベンチャーの威馬汽車も車載SNS「威尋」(WMeet)版を開発する際に、安全が常に優先事項だったと述べた。

 前出の「スマートカー車載通信ソフトウェア評価報告」のデータによると、人々の交通情報の80%は視覚、14%は聴覚に由来し、道路交通事故の25-50%は運転者の注意力の分散によるものだ。

 このため、テンセントはWeChat車載版を設計する際、従来のWeChatのコンセプトを踏襲せず、視覚の占有を最小限に抑えることで、HMIの安全性を担保する必要がある。

 「WeChat車載版のデザイン構想は、音声操作とハンドル操作の組み合わせによる簡潔な新しいWeChatだ」と鐘学丹氏は説明する。

 このような安全で簡潔なデザインコンセプトに基づいて、テンセントはWeChat車載版の機能に対して減算を行った。メッセージ関連機能だけを残し、グループやラッキーマネー、スタンプなどの機能を削除した。また、WeChat車載版は音声入力と物理的なボタン操作を組み合わせたインタラクティブ方式を採用しており、運転者が音声対話と聴覚で情報を受け取ることができ、運転中に目をそらす必要がなく、かつ連絡先機能を一時的に隠すことで、運転者の注意力の分散を最小限に抑え、安全性を高める。

 またテンセントは、開発者向けにOSとクラウドを跨いだ軽量化アプリフレームワークに基づいた「テンセントスモールシーン」を公開している。ダウンロードとインストールを必要とせず、クラウド側でオンラインアップデートができる「テンセントスモールシーン」では、安全な車載用HMIを満たすために、音声と視覚による完全なインタラクションを採用している。

 さらに重要なのは、開発者へのハードルはそれほど高くなく、開発者はアプレットの基礎さえあれば、簡単に改造して「テンセントスモールシーン」を実現できると同時に、豊富なテンセントの外部リソースへの接続をサポートしている。現在、テンセントはすでにモビリディ、SNS、生活、娯楽、ユーザーサービスの5つのジャンルでスモールシーンを展開しており、そのうえさらに50の細かいサービスを開始している。

 前出の鐘学丹氏は「テンセントの位置づけは、モビリティ業界と自動車業界のデジタル化アップグレードのオペレータの1人だ」と述べた。テンセントは、車そのものではなく、車を利用する過程において、ユーザーがより良いサービスを受けられるかどうか、また自動車メーカーとの良い接続を確立できるかどうかに注力している。

 現在テンセントは、22社の自動車メーカーと提携関係を構築しており、テンセントサービスを導入した車種は45種を上回り、300社以上のエコシステムとサービスを導入している。また、同社は18社の自動車メーカーにクラウドサービスを、5つのモビリティサービスプラットフォームにモビリティサービスソリューションを提供している。


参考記事:https://www.leiphone.com/news/201911/25RbAGOUAya2HRIu.html

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