CATLの「凝聚態電池(Condensed Battery)」は、半固体電池の一種

 4月19日にCATL(寧徳時代)が上海国際自動車ショーで「凝聚態電池(Condensed Battery)技術」と発表したことは、業界において大きな話題となった。

 これに先立ち、昨年8月28日、CATL首席エンジニアの呉凱氏はあるイベントで、同社が2023年に次世代電池セル「凝聚態電池」を発売する計画であることを明らかにした。呉凱氏によると、いわゆる「凝聚態電池」は高い安全性、高い信頼性、優れたサイクル寿命などの特徴を持つ。

 これまでの報道や宣伝は、様々な専門用語を持ち出して「凝聚態電池」を説明してみたが、結局「よくわからんけど、凄いらしい」というイメージにとどまり、「凝聚態電池」の正体を巡る議論が絶たない。ちなみに中国語の「凝聚態」は、日本語では「凝集した状態」という意味である。

 現在主流の電池システムにおいて、CATLの「麒麟電池」とBYDの「ブレード電池」は、CTP(Cell to Pack、セル直接パッケージ技術)であり、テスラ4680電池は、CTC(Cell to Chassis、電池ボディ一体化技術)に属しており、いずれも電池パックの構成技術で、言い換えると、限られたスペースにより多くの電池セルを詰め込む技術である。

 CATL「麒麟電池」のセル単体エネルギー密度は350Wh/kgで、テスラ4680電池は300Wh/kgである。リン酸鉄リチウム電池については、BYDの「ブレード電池」のセル単体エネルギー密度は160Wh/kgである。これらの量産電池に比べて、今回発表されたCATLの「凝聚態電池」は500Wh/kgのエネルギー密度を実現しているという。

 リチウムイオン電池のエネルギー密度と安全性能のトレードオフ関係の中で、出力を高めるために、現在、トヨタやホンダなどの自動車メーカーや、LGエネルギーソリューションなどの海外勢のみならず、中国国内の動力電池メーカー、さらには素材メーカーも固体電池の開発を進めており、現在主流の液体リチウムイオン電池を徐々に固体リチウムイオン電池に転換しようとしている。

 しかし、全固体電池の開発技術の難易度が高く、コストが高止まりである。全固体電池が実用化する前に、固体液体混合電解質を採用した半固体電池は現実的な移行案として業界に好まれている。

 CATLの「凝聚態電池」も実は半固体電池の一種である。現在業界全体の開発の進捗や量産の情況を見ると、先行事例として、すでに東風汽車傘下の風神ブランドの東方E70と小康ブランドのSERES 5は動力電池メーカー「贛鋒鋰電」製の「高比能固体電池」と称される半固体電池を搭載しており、NIOが今年の量産車に自社開発の150kWhの半固体電池を搭載する予定である。

 注意すべきは、一部のメディアが指摘したように、CATLの「凝聚態電池」は、例えば隔膜をなくしたり、負極にリチウム金属などを採用したり、電解液にポリマー、酸化物または硫化物の電解質を使用するなど、全固体電池の材料上の大きな革新とは異なっており、依然半固体電池の技術水準にある。「凝聚態電池」の正極は依然として高ニッケル三元系で、負極はやはり黒鉛またはシリコンベースの負極で、隔膜は正負極の短絡を防ぐために使用する必要があり、電解液だけがこれまでの液体電解液から現在のコロイド( 膠質 )状電解液に変わっている。一方メリットとして、現在動力電池の産業チェーンの中の材料、制造手順と適用設備などは実は基本的に通用するもので、大部分は互換性があるため、「凝聚態電池」の量産コストは全固体電池に比べて遥かに低く抑えることができる。

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