米国でつまずいたTuSimple、日本と中国で巻き返しを狙う

 ロボトラックスタートアップのTuSimple(図森未来)は最近、日本にも進出し、東名高速でテスト走行を開始していることで、内外から注目されている。

 6月9日、TuSimpleは、中国上海市浦東新区が発行した全国初の完全無人自動運転車道路テストナンバープレートを取得し、洋山深水港及び物流園区、東海大橋などの指定公開道路でL4レベルの大型トラックの「完全無人化走行テスト」を実施することを許可された。

 中国は、自動運転に関する交通関連法規の改正が進まず、各地では、乗用車を中心に限定されたエリアでテスト走行を行うことが認められている。今回上海は、L4レベル大型トラックの「完全無人化テスト」を許可した中国初の都市になる。

 TuSimpleは、2015年に最先端の大型トラックの自立型自動運転技術を開発する企業として発足した。2021年4月、米ナスダックに上場し、ロボトラックスタートアップ企業として初の銘柄となった。

 しかし上場以来、TuSimpleのロボトラック事業は、ずっと大きな損失を抱えてきた。同社が、決算を更新したのは昨年10月までである。それによると、2022年第3四半期の売上高は265.3万ドルで、前年同期比48.63%増の178.5万ドル、純損失は1.13億ドル、前年同期の1.15億ドルと比べてほぼ横ばいでである。

 昨年10月以来、TuSimpleでは頻繁なトップ争いや人員削減、組織再編が発生しているが、主な原因は、同社が技術発展方向の重点をL4レベルの自動運転からL2レベルの運転補助に移すべきかどうかをめぐる意見の対立と外部への技術提供疑惑であり、今年3月、TuSimpleの共同創業者である侯暁迪氏が取締役会の役職を辞任したのも、事業方針の急激な変化によるものだと推察されている。

 今年5月5日、TuSimpleは、2022年9月30日までの四半期報告書、および2022年12月31日までの年次報告書を期限内に提出しなかったとしてナスダックから上場廃止の通知を受けた。上場廃止決定に対する上訴がなければ、TuSimpleの株は5月15日の取引開始時点で停止することになるが、現在同社が上訴中との情報もある。

 このような状況の中で、TuSimpleは、事業の中心を米国からアジアに移行し、L4レベルの自動運転に憧れを持っている中国や日本で巻き返しを狙っている。

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